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与信管理の知恵袋 Vol.12 債権保全策の検討~リスク移転の観点から~
こんにちは。MCC与信管理ラボ編集部です。
企業間取引におけるリスクを低減させる方法はいくつかありますが、基本的な方向性は以下の2通りです。
方向性①:取引先企業を慎重に選ぶことによって、未回収債権の発生リスクを低減させる。
方向性②:債権保全によってリスクを第三者に移転する。
今回は、②の「債権保全策の種類や第三者に与信リスクを移転する方法」について解説します。
債権保全策の種類
一口に債権保全策といっても、その種類はさまざまです。具体的には、以下の3種類に大別できます。
債権保全策① 未回収債権が発生した場合の施策
引先企業が支払いに応じず未回収債権が発生している場合は、あらかじめ設定していた担保権を行使することで、仮差押えや仮処分の手続きが可能です。
どちらも裁判所に申請を行う必要がありますが、取引先企業が倒産する前に、速やかに手続きを進めるべきでしょう。
債権保全策② 未回収債権が発生した場合の施策
債権保全策には、貸倒債権が発生した後の対応だけではなく事前の対応策も含まれます。
前述した手続きを行使するために担保権を設定しておくことは、代表的な事前対策の1つです。
また、支払い延滞時に取引先企業にリスクを負わせる遅延損害金の設定、支払いの強制力が大きい売掛金の手形化なども有効な債権保全策です。
債権保全策③ 第三者にリスクを移転
条件付きで第三者に与信リスクを移すことができます。
基本的には保険会社や保証会社が提供している与信管理サービスですが、利用するサービスによって、保証内容に違いがあります。
この「債権保全策③ 第三者にリスクを移転する方法」について詳しく見ていきます。
与信リスクを第三者に移転する債権保全策とは
第三者にリスクを移転する債権保全策として、取引信用保険、ファクタリング、また、その他の債権保証サービスについてご説明します。
債権保全サービス① 取引信用保険
取引信用保険は、取引先企業が倒産した場合、もしくは一定期間支払いがなかった場合に、保証内容に応じて一定額の保険金が支払われる保険です。
取引信用保険のメリット
保険を利用することで貸倒リスクを抑えながら積極的に営業活動ができる、加えて保険料を損金として処理できるメリットがあります。
取引信用保険の注意点
一方、基本的に取引先単位ではなく、取引先企業を包括的に付保することを条件とした契約形態であるため、包括の内容によっては保険料のコストが高くなる可能性があります。
また、あらかじめ設定していた免責金額や縮小率によって受け取れる保険金が決定します。
債権保全サービス② ファクタリング
ファクタリングは、専門のファクタリング会社が提供する保証サービスです。主に「買取ファクタリング」と「保証ファクタリング」の2種類に大別できます。
ファクタリングのメリット
買取ファクタリングでは、その名の通りファクタリング会社に売上債権(売掛金・受取手形等)そのものを売却します。売掛金だけでなく、手形も早期決済できるというメリットがあります。
また、売上債権(売掛金・受取手形等)はファクタリング会社に渡るため、その後の回収業務を行う必要はありません。
一方の保証ファクタリングは、取引先企業の倒産などで未回収債権が発生した際に、取引先企業の信用度によって設定された保証金を受け取れるサービスです。
保証を掛けておくことで貸倒れのリスクを低減できることに加え、与信審査をファクタリング会社にアウトソーシングできることもメリットと言えるでしょう。
保証ファクタリングの注意点
保証ファクタリングは取引信用保険と同様に与信リスク移転に有効な方法ですが、保証料を掛け捨てで支払う必要がある点に注意が必要です。
債権保全サービス③ その他の債権保全サービス
上記のファクタリング会社以外にも、債権保証サービスを提供する会社があります。
保証対象として、ファクタリングと同様に一定数以上の取引先企業を設定するケースが一般的ですが、1社単位で契約できる場合があります。
なお、一般的に保証会社へ支払う保証料率は、取引信用保険の保険料率と比較して高くなる傾向があります。
適切な債権保全サービスを活用する
ご紹介したそれぞれの債権保全サービスは万能ではありません。
債権保全を万全にするためには、各サービスの特徴を把握し、自社の経営状況や取引先企業、取引金額に応じて使い分ける必要があります。
また、適切な債権保全サービスを選択するために、取引先企業へのモニタリング(常時信用変動の調査)を徹底しましょう。
おわりに
未回収債権のリスク回避対策、未回収債権発生時の損失軽減対策に加え、与信リスクを第三者に移す方法についても知っておきましょう。
これらの対策を万全にすることで、債権保全がより強固になります。
積極的で安全な企業活動のために、自社の債権保全を見直してみてはいかがでしょうか。
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