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与信管理の知恵袋 Vol.10 債権保全サービスのメリット・デメリット
こんにちは。MCC与信管理ラボ編集部です。
債権保全は、危機発生時に代金未回収にならないための対応策を講じるだけでは不十分であり、事前対策が重要です。事前対策として、債権保全サービスの利用が効果的な場合があります。
今回は、債権保全サービスを利用する場合のメリット・デメリットについてご紹介します。
債権保全サービスとは
債権保全サービスは、大きく ①取引信用保険、②保証ファクタリング、③その他の債権保証サービス に分類されます。
それぞれのサービスの概要は以下の通りです。
①取引信用保険
取引信用保険は、取引先企業において法的整理事由の発生(※1)または履行遅滞の発生(※2)により売掛債権の回収を行えない場合、自社が被る損害の一定部分について損害保険会社が補償する企業向け包括保険商品です。
※1 法的整理事由の発生
取引先に民事再生手続の開始や会社再生手続の開始の申立があった場合等において、債務が履行されないとき。
※2 履行遅滞の発生
取引先が債務の弁済期日から一定期間を経過しても債務を履行しない場合において、その債務につき履行の見込みがないと判断されたとき。
②保証ファクタリング
保証ファクタリングは、売掛債権をファクタリング会社が買い取るのではなく、売掛債権に保証会社の保証を掛けるサービスです。
保証を掛けておくことで、売掛金が未回収となった場合に保証会社が保証金を支払います。
③その他の債権保全サービス
その他の債権保証サービスに関しては、保証会社が貸倒れ等による損害をカバーしてくれるサービスで、1社単位から契約が可能となるサービスを提供している会社もあります。
債権保全サービスを利用する4つのメリット
債権保全サービスを利用するメリットは、損害に対する補償といった直接的なものから、副次的な効果まで挙げられます。
メリット1:未回収債権発生に対するリスクヘッジ
もっとも大きなメリットは、焦げ付きや貸倒れなどで被る損害を最小限に抑える点です。
損失分を早期にカバーできるため、確実な資金回収が可能となり、キャッシュフローの安定化につながります。
契約内容次第では、回収予定金額の全額が補償されるサービスも存在します。
メリット2:与信審査・分析による負担の軽減
保証会社、保険会社の審査結果は与信判断の重要な参考指標となります。
また、一括での見積り依頼ができるため、与信審査・分析にかかる時間が短縮でき、自社負担が軽減できます。
メリット3:商談のスピードアップ
自社で与信管理を行う場合は、取引先企業に決算書などの資料を提示してもらう必要が出てきます。
しかし、相手が中小企業の場合などは担当者が多忙であることも多く、必要書類がそろうまで時間がかかってしまう可能性があります。
その結果、取引の開始が遅れてしまい、販売機会の損失につながりかねません。
一方、債権保全サービスを利用することは与信管理に関する手続き業務の一部を代行してくれるとも言えるため、負担が軽減され、商談のスピードアップが実現できます。
メリット4:対外信用力の向上
売上債権のリスクヘッジができている点から、取引先金融機関や仕入先からの信用力向上が見込めます。
信用力が向上することで、新たな取引への好材料になる可能性があります。
債権保全サービスを利用する3つのデメリット
債権保全サービスの利用に多くのメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
デメリット1:コスト増
サービスを利用することによって、保証料や保険料の支払いが必要となります。
継続的に利用すれば、それがランニングコストになる点を忘れてはいけません。
これは取引信用保険や保証ファクタリング、その他の債権保証サービスであっても同様です。
また、中小企業向けの経営セーフティ共済などは費用が安く敷居は低いのですが、取引先企業の倒産時に受けられるのはあくまでも融資ですので、後で返済が必要となります。
一時的な立て直しには活用できますが、厳密には債権保全ではないことを覚えておきましょう。
デメリット2:取引に係る審査・分析を他社に依存
債権保全サービスの提供会社は独自の審査基準を持っています。
もちろん、それ自体は非常に有効で信用できるものですが、ノウハウまでは提供されない場合があります。
これはつまり、自社内に与信審査・分析に関わる知識や経験が蓄積できないということです。
債権保全は与信管理の一部ですから、自社一貫で行おうとした場合でもサービス提供会社に依存せざるを得ない場合があります。
デメリット3:債権保全サービスが本当に必要かどうかの見極めが難しい
債権保全サービスを利用するか否かついては、自社の現状の経営状況や取引先企業、将来の与信・債権管理体制などについてしっかりと見極める必要があります。
現在、取引先企業とのリスクヘッジを行いながら売上や収益を伸ばしたいが、人的リソースが足りていないのであれば、債権保全を含む与信管理をアウトソースするのは非常に有効でしょう。
一方、将来的に自社だけで完結するように与信管理を行いたいのであれば、ノウハウ蓄積のために与信管理・債権管理に対するコンサルティングを依頼する方法もあります。
また、その一部をアウトソーシングでまかなう方法もあるため、状況に合わせて柔軟に活用すると良いでしょう。
おわりに
債権保全サービスの利用はリスクマネジメントの観点だけでなく、販売機会の逸失防止や与信管理の面でさまざまなメリットをもたらします。
ただし、サービスの利用には継続的なコストがかかるため、自社の経営指標や取引状況などに合わせて適切に利用しましょう。
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