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与信管理のプロが教える財務分析のしかた Vol.4 財務比率における注意点(売上債権回転率、棚卸資産回転率、仕入債務回転率)

財務比率を計算する電卓

こんにちは。MCC与信管理ラボ編集部です。
今回は企業経営の効率性表す指標として、資金の回転率についてお話します。

資金の回転率とは?

資金の回転率とは、投下資金に対して、何倍の売上高を上げているのかを見る指標です
値が大きいほど資金を効率的に運用していることになります

企業経営の効率性を表す指標(一例)

経営の効率性を表す財務比率として、主に、以下の3つが挙げられます。

  • 売上債権回転率
  • 棚卸資産回転率
  • 仕入債務回転率

この3つの財務比率について詳しく見ていきます。

売上債権回転率

まず、効率性を表す比率のうち、売上債権回転率についてお話します。

売上債権回転率の計算式

売上債権回転率は、下記の計算式で求められます。

売上債権回転率 = 売上高 ÷ 売上債権(売掛金・受取手形等)

売上債権回転率の読み解き方

売上債権回転率は、売上債権の回収がどれほど効率的に行われているかを見る指標であり、大きいほど効率よく資金が回っていると言えます。

分析する際の注意点

ただし、実務においては、次の点を注意する必要があります。

・ 急激に売上高が伸びていたり、毎期大幅に売上債権が変動していたりする企業は、1期ではなく、2~3期の平均値より売上債権回転率を見る。
・ 商品の資金効率を見る為、商品別に売上債権回転率を見る。
・ 売上債権回転率が急激に低下している場合は、不良債権の増加を疑う。

棚卸資産回転率

棚卸資産回転率も売上債権回転率と同様、効率性を見る上で重要な指標です。

棚卸資産回転率の計算式

棚卸資産回転率は、下記の計算式で求められます。

棚卸資産回転率 = 売上高 ÷ 棚卸資産

棚卸資産回転率の読み解き方

棚卸資産回転率は、棚卸資産(在庫)を効率的に売上に結びつけているかを見る指標であり、たとえば、年間売上高が1,000万円で期末在庫残高が250万円とすると、年間で商品の仕入から売上までを4回実施したことがわかります。

分析する際の注意点

ただし、棚卸資産は変動が大きく、評価することも難しく、評価自体にも恣意性の働く余地が多いことから、期末在庫をそのまま数式に当てはめると実態を見誤ることがありますので、下記事項に留意する必要があります。

季節による在庫の変動

企業によっては、季節によって在庫に相当の増減がありますこのような場合には、期末在庫ではなく、たとえば年間平均在庫により計算すると一層その企業の実態が把握できることになるでしょう。

在庫の推移のチェック

極端な例では、期末時点の棚卸資産を小さく見せる為に、期末直前に在庫を取引先に引き取ってもらい、決算終了後に買い戻すようなケースもありますので、在庫の推移を毎月チェックし、実態をよく把握する必要があります

他にも、更に細かく在庫を分析する方法として、商品ごとの売上高、棚卸資産回転率を計算すれば、売れ筋商品や売れ行きの悪い商品を観察でき、企業の現状、将来性を判断する材料にもできます。

仕入債務回転率

さいごに、仕入債務回転率についてお話しします。

仕入債務回転率の計算式

仕入債務回転率は、下記の計算式で求められます。

仕入債務回転率 = 売上原価 ÷ 仕入債務

仕入債務回転率の読み解き方

仕入債務回転率は、仕入債務と仕入高の関係を見る指標であり、仕入債務には、通常買掛金と支払手形が該当します。

また、回転率の把握にあたっては、単期の仕入債務で計算すると正確性を欠く為、通常は2期間の平均仕入債務残高を用います

仕入債務回転率が高くなることは、仕入債務に対して支払期間が短くなっていることを示します
このような場合、仕入先より決済条件の短縮化や現金決済を要求され、その分資金繰りが逼迫していることが予想されます

さらに、仕入債務回転率は、対応関係にある売上債権回転率と比較することが重要です。

その理由は、一般的には売上債権回転率と仕入債務回転率は相関関係にあると言えるからです。
市場が伸びて売上高が伸びれば、見合いの仕入も増える為、仕入債務も当然に増加するのが普通です。

したがって、仕入債務回転率にあまり変化がないのに、売上債権回転率が低くなっている場合には、売上債権の回収が遅延していることが推測され取引先に確認することが必要と思われます。

また、仕入債務回転率は自社の決済条件の有利・不利を見る場合の有効な指標ともなります。

たとえば、取引先の全取引先に対する仕入債務回転率の平均値が5回転で、当社の債権回収までの与信期間が2回転であれば、当社の決済期間が他社より相当長いと推測されますので、その理由を確認し、場合によっては取引先と交渉し、自社の決済条件を短縮することも期待できます。

分析する際の注意点

なお、仕入債務回転率の算出にあたっては、期末が休日の場合は注意が必要です。
なぜなら、決算期末が休日であれば、たいていの企業は翌営業日が決済日となる為です。

たとえば、前期の仕入債務回転率が5回転であり、今期が4回転であった場合、仕入債務期間が長くなり、一見、仕入資金に余裕が出たように見受けられますが、今期の期末が休日であれば、決済日は翌営業日となり、決済金額が差し引かれていない仕入債務残高が決算書に計上される為、実態を見誤る可能性があります。

期末の休日の場合の仕入債務回転率を算出する場合には、上記を踏まえ、本来であれば期末に決済すべき金額を差し引いて算出すると、より実態に近い仕入債務回転率が把握できます。

おわりに

いかがでしたでしょうか。
各財務比率の算出方法には諸説ありますが、今回は、代表的なものをご紹介しました。
お取引先の資金面の効率性について、注意深くモニタリングしていきましょう。

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