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与信管理の知恵袋 Vol.5 債権保全とは

債権保全策について議論する与信管理担当者

こんにちは。MCC与信管理ラボ編集部です。

万が一、取引先が倒産するなどして代金の焦げ付きや貸し倒れが起こった場合には、債権回収を行わなくてはなりません。
そのため、こうした事態に備えて事前に対策を講じることが重要です。

今回は、確実な債権回収のために欠かせない「債権保全」についてご紹介します。

債権保全とは?

債権保全とは、債権を確実に回収するための施策を指します。

売上が入金されなかった場合、債権者は債務者の財産に対して強制執行が可能です。

しかし、そのためには裁判所で確定判決などを受けた上で、債務名義を取得しなくてはなりません。

債務名義とは、債権の存在・範囲を証明する公的文書のことです。
債務名義は事前取得が可能ですが、取得できていない場合はいちから手続きを行う必要があり、実際に強制執行となるまで長い時間を要します。

やっと強制執行ができるようになったときには既に債務者が財産を処分していた、といった場合に回収ができなくなるケースも考えられます。

そこで、債権者には債権保全の手続きとして、担保権の設定や保証契約の締結の他、実際に倒産となった場合には、担保権の行使や仮差押え・仮処分が認められています

債権保全の方法

ここで、取引先の倒産の危機に伴い、債権保全を行う場合を見ていきましょう。

もしも取引先から期日内に売上の入金がなかった場合は、債権保全について考える必要があります。

この際、取引先が協力的な姿勢であれば、事前に設定した担保権を行使する、代表者などに個人保証を求めるといった対応が必要です。

なお、担保というと不動産のイメージが強いかもしれませんが、今回の場合は取引先が所有する売掛債権や在庫などもその対象に含みます。

一方で、取引先からの協力が得られないようであれば、以下のような方法も検討しなくてはなりません

    取引先からの協力が得られない場合の対応

  • 商品の引き上げ
  • 相殺
  • 代理受領・代物弁済
  • 仮差押え

商品の引き上げ

既に納入済みの自社商品を取引先から引き上げる方法です。

ただし、商品の引き上げを行う場合、取引先からの承諾を取れていることが条件となります。
勝手に取引先へと足を運び商品を引き上げると、窃盗罪に問われてしまう可能性があります。

相殺

相互に仕入れがあるような状況であれば、取引先から自社への債権と、自社から取引先に対する債権を相殺することで、債権回収と同様の効果を上げられます。

なお、相殺を実行するためには一定の要件が必要で、これを相殺敵状といいます。

代理受領・代物弁済

取引先に代わり、第三者からの支払いを自社で受けることを代理受領といいます。
また、代物弁済は取引先の在庫商品を債務の代わりとして引き受けることです。

仮差押え

債務者の財産の処分権を制限することを仮差押えと呼びます。

既に述べたように、強制執行による差押えを申し立てた場合、判決が出るまでに時間がかかり、取引先の財産が処分されてしまう可能性がありますが、仮差押えを行うことでこれを防ぐことができます。

仮差押えをきっかけに、取引先が任意弁済に応じてくれる場合もあるため、債務保全に有効な手段といえるでしょう。

与信管理で事前に危機回避を図る

債権保全策は、危機発生時だけがすべてではありません。

担保の設定をはじめ、例えば遅延金利を設定したり、支払いを手形化したりといった事前対策もこれに当たります。

そして何より重要なポイントは、取引開始前にしっかりとした与信調査を行うとともに、取引開始後にも定期的に取引先の経営状況を把握し、与信をモニタリングすることです。

債権回収には大きな労力と時間を要します。そうならないためにも、与信管理を厳格に行うことが大切です。

おわりに

今回は債権保全の意味とその方法についてご紹介しました。

売上代金の未回収は、連鎖倒産を招く可能性も考えられます。

万が一に備えるためにも、債権保全についてしっかりと理解し、与信管理などで事前対策を講じるようにしましょう。

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