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民法(債権法)改正 < 連載第12回 >「消滅時効および法定利率に関する改正民法の内容~法定利率について~」
前回の記事では、「消滅時効」について法改正の背景やポイント、実務上の留意点等をお話ししました。
今回は、「法定利率」について解説していきます。
法定利率に関する法改正のポイント
(1)改正の背景
改正前民法では、同法制定当時の経済情勢を前提として、年5%の民事法定利率、年6%の商事法定利率をそれぞれ定めていました(固定制)。
しかし、現在の市中金利と法定利率との間に大きな乖離が生ずるようになったことから(「法定利率が高過ぎる」との批判も・・・)法定利率を引き下げ、乖離を是正する必要がありました。また、固定制とすると将来的に乖離のおそれが残ること等を踏まえて、以下のような改正が行われました。
(2)改正民法の概要
消滅時効期間に関して、改正の主なポイントは以下ポイント1~3のとおりです。
ポイント1:
改正民法施行時の法定利率が年3%に引き下げられました。
ポイント2:
3年を1期として、貸出約定平均金利の過去5年間の平均値を指標とし(各時点から6年前の年の1月を始期として5年間の各月の短期プライムレートの平均利率)、この数値に前回の変動時と比較して1%以上の変動があった場合にのみ、1%刻みの数値で法定利率を変更するという緩やかな変動制へと改正されました。
ポイント3:
商事法定利率については、「民事法定利率とは別途存置する合理性が乏しい」として廃止され、上記ポイント1、2に記載した法定利率に統一されました。
(3)民法改正に伴う経過措置
改正民法施行日前に利息が生じた場合におけるその利息が生ずべき債権の法定利率は改正前民法が適用され、施行日以降に利息が生ずべき債権の法定利率は改正民法が適用されます。
改正民法施行前に債務者が遅滞の責任を負った場合における遅延損害金が生ずべき債権にかかる法定利率は改正前民法の年5%のままとなります。
(4)実務上のポイント
法定利率の主な適用場面は、利息を支払う合意はあるが約定利率の定めがない場合の利息の算定(たとえば、利息付消費貸借契約)、約定利率の定めがない金銭債務の遅延損害金の算定 (たとえば、損害賠償などの遅延損害金)となるため、契約実務上、約定利率を明確に定めておくことで、上記法定利率の適応場面を回避することができます。
個別の事案においては、利息を支払う義務が生じた最初の時点における法定利率が適用され、法定利率の変動があったとしても当該事案に適用される法定利率は変更されません。
コラム筆者プロフィール
東京霞ヶ関法律事務所 弁護士 清塚 道人氏
中央大学法科大学院修了、2012年弁護士登録(65期・松山修習)東京霞ヶ関法律事務所入所。
主な取扱分野は、企業法務、債権保全・回収、倒産処理、労働事件、商事・民事事件、刑事弁護事件等。