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与信管理の知恵袋 Vol.25 与信管理業務の繁忙期と対策(後編)

与信管理業務を行うチーム

こんにちは。MCC与信管理ラボ編集部です。

与信管理業務にも繁忙期とされる時期があります。

この時期の与信管理業務を上手に対処し貸倒れリスク(信用リスク)を低減することが重要です。

「後編」の今回は、与信管理業務の繁忙期を見越した対策について、具体的にお伝えします。

※「与信管理業務の繁忙期と対策(前編)」の記事はこちら

与信管理業務繁忙期への対策は、前倒し、省力化と外注化、濃淡管理

与信管理業務の繁忙期への対策として、主なものは以下の3つです。

与信管理業務の繁忙期への対策①:営業部門を巻き込んだ与信管理業務の前倒し

与信限度額(与信枠)や与信期間(代金の回収期間)の再設定など、取引条件の見直しを行う際には、営業部門から新たな条件をどのように設定したいのか申請してもらわなければなりません。

この申請が遅れると、その後の与信管理(審査)部門での分析を開始する時期も遅くなります。

一方で、見直しのタイムリミットは社内ルールで決まっているため、申請の遅れは与信管理業務の更なる集中化を招きます。

仮に、申請を前倒しで行ってもらえるならば与信管理(審査)部門での業務の平準化を進めることが可能になります。

そのため、営業部門からの申請は可能な限り前倒しに行って欲しいのですが、営業部門には与信管理に対して色々な考えをお持ちの方がいらっしゃいます。

与信管理に大変真剣に取り組まれている方もいらっしゃいますが、日々の営業活動に追われて、やらなければならないと解ってはいるものの、どうしても見直しの申請が後回しになってしまう方がいらっしゃるのも事実です。

また、与信限度額(与信枠)や取引条件などの与信管理の申請は、決算書の取り付け、信用調書の購入を中心とした取引先企業の情報収集、今後の販売見通しや取引先からの各種要請への対応、加えて相互的な判断や所見等を求められるため、営業部門の方にとっては相応に負荷の大きな業務と言えます。

営業部門の方が置かれている状況を考えると、与信管理の申請が後回しになってしまうことを一方的に責めることは、良い解決方法とは言えません。

では、具体的にどのように営業部門に働きかければ申請を早めてもらうことができるでしょうか。

まず一つは、事前のアナウンスです。

与信限度額(与信枠)や取引条件の見直し時期が迫っている案件をリスト化してそれぞれの営業部署、可能であれば各営業担当者に配信することで、どの案件について申請を行うべきなのかを認識してもらいます。

また、過去に取引先企業から直接決算書を入手した時期がわかっているならば、その時期を伝え、営業が取引先企業に決算書の要請を行うことをリマインドします。

加えて、信用調書を購入する必要があれば、その取引先企業の最新決算期が信用調書に反映されているかを興信所に確認し、最新決算期が反映されたタイミングで営業担当者に信用調書の購入(情報収集)を促します。

このように、与信管理(審査)部門の担当者が営業部門にいま行うべきことを早めにアナウンスすることによって、申請の前倒しを促します。

与信管理業務の繁忙期への対策②:与信管理におけるルーティン業務の省力化と外注

与信限度額(与信枠)や取引条件の申請書式は、各企業がビジネスの特性に合わせて作成されています。

個々のビジネスの特徴により申請書に記載するべき事項は異なるため、フォーマットの内容に正解はありませんが、わたしたちがコンサルテーションを行うなかでよく拝見するのが、ExcelやWordで申請書を作成するという方法です。

ExcelやWordで申請書を作成すること自体に問題は無いのですが、多くの場合、その内容には省力化の観点から改善の余地があります。

たとえば、ある入力箇所が定型化できそうであれば、そのような箇所はプルダウンメニューを設定する。

あるいは、いくつかの選択肢をあらかじめ記載しておいて、実際に申請書を作成する際は、不要な選択肢部分を消去するだけにしておく、などです。

1件ごとの手間や作業時間はたいしたものではないかもしれませんが、積み重なると相当の省力化につながります。

また、テキスト入力部分を減らすことは作業に取りかかる精神的な負担を軽減することにもつながります。

別のケースでは、与信管理業務において入手した取引先企業の決算書や信用調書の財務情報を、自社の分析フォーマットへ入力しなおすということを行っている企業様を拝見することがあります。

確かに決算書のインプットは、元の決算書とインプット先の勘定科目が一致しない場合の対応などがあり単純なアウトソーシングができない場合があります。

マンパワーが潤沢であれば自社内での対応で問題は無いのですが、繁忙期且つ人材の確保も難しい場合は、外部の与信管理サービスを利用するなど、専門的な機能を持つ会社への外注を検討するべきです。

上記のように、Word、Excelで作成した申請書を紙でプリントし、決裁者を持ち回ることで稟議決裁を行う企業もまだ多いと思われます。

与信限度額(与信枠)の決裁件数が少数であり、決裁者が自席にいることが多く日々の押印が可能であれば、紙の申請書の持ち回りの決裁は問題ありません。

しかし、件数が多数であり決裁者が出張等で自席を離れることが多い場合は、与信管理用のワークフローシステムを使って業務の効率化を目指しましょう。

与信管理業務の繁忙期への対策③:リスク度合いに応じた濃淡管理

リスク管理で重要なことは、比較的大きなリスクに対してはマンパワーやコストをかけた管理を行い、比較的小さなリスクには対応に省力化を行うことです。

つまり、業務の重要度に応じて対応方法にメリハリをつけることが重要と言えます。

与信管理業務が対象とする主な(信用)リスクは、販売先への貸倒れリスクと考えられます。

したがって、比較的大きなリスクとは、取引先企業への債権残高(売掛金、受取手形の残高)とその企業の信用レベル(倒産への危険度)の2軸で判定されます。

すなわち、債権残高(売掛金、受取手形の残高)が多く、信用レベルが低い(倒産への危険度が高い)取引先企業が比較的リスクの高い先に該当します。

このような企業への与信判断は様々なことを調査・審査し、検討することが求められます。

たとえば、財務情報の分析、信用調書の分析、販売先や仕入先ルートの安定性、営業がヒアリングした内容と分析結果の整合性確認、担保・保証取付けの検討や交渉、取引信用保険や信用保証によるリスクヘッジの検討などが挙げられます。

これらの対応には当然、相応の時間が必要となるため、①営業部門を巻き込んだ与信管理業務の前倒しに記載したとおり、早めに営業部門への行動を促し、検討するべきことが漏れることのないよう慎重に対応することが重要です。

なお、そのような取引先企業への与信管理は全社的な課題とも言えます。

そのため、与信限度額(与信枠)の承認にあたっては、役員等の上位の役職者による決裁を必要とするなどの、社内ルールを変更することも検討するべきです。

一方、比較的小さなリスクとは債権残高(売掛金、受取手形の残高)が少なく、信用レベルが高い(倒産への危険度が低い)取引先企業を指します。

もちろん、そのような場合でも何もしなくて良いという訳ではありません。

たとえば、外部機関が算出する指標の条件を満たした場合は営業部門のみでの決裁を可能とするなど社内ルールを変更し、それに則った形で与信限度額(与信枠)や取引条件の見直しを完結させるようにしましょう。

リスク度合いに応じた濃淡管理を導入することによって、マンパワーや時間等のリソースを多く割くべき対象と省力化するべき対象を明確にし、与信管理業務にメリハリをつけましょう。

おわりに

与信限度額(与信枠)や取引条件の定期的な見直しは、その業務の性格上どうしても7月から10月頃を中心に繁忙期が発生します。

この時期に営業部門の協力を得ながら、少しずつでも省力化や外注を進めることが肝要です。

そして、濃淡管理に基づき特に比較的大きなリスクに注力できるような体制を整えることで、繁忙期を乗り切り思わぬリスクを抱えないようにしましょう。

当社では、「繁忙期を見越した与信管理体制の構築(規程の見直し)」「与信限度額申請書のフォーマットの改善」、「与信管理ワークフローの導入による与信管理の省力化」など、多様なコンサルティング実績がございます。

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