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与信管理の知恵袋 Vol.22 債権保全と中小企業倒産防止共済
こんにちは。MCC与信管理ラボ編集部です。
企業間の与信取引は、売上債権(売掛金・受取手形等)が未回収となるリスクをゼロにすることができません。
そのため、リスクを軽減するための与信管理や債権保全策が必要です。
特に中小企業においては、主要取引先の倒産といった緊急事態に備えるための債権保全が非常に重要となります。
今回は、債権保全と中小企業倒産防止共済についてご紹介します。
この記事で分かること
・債権保全はなぜ重要なのか?
・中小企業防止共済とは?
・中小企業に適した債権保全策とは?
債権保全はなぜ重要なのか
たとえ安定した取引が続いている取引先であったとしても、取引先企業の販売先が突然倒産した場合、取引先が万全な保全策をもっていなければ、売上債権(売掛金・受取手形等)の回収は困難になります。
取引先が資金繰りの調整をできない場合は、自社との支払状況にも影響が出始めます。
最悪のケースとしては結果的に取引先企業が倒産してしまう、いわゆる「連鎖倒産」となるリスクがあるのです。
また、自社の販売先が大口取引先に売上が集中している場合、その取引先企業1社だけでも倒産となれば、未回収となった代金の補填に大きな負担がかかります。
そのような、万が一の焦げ付き・貸し倒れが発生した場合の損失をカバーする施策が重要です。
取引規模を縮小してリスクを軽減することも方法の1つですが、消極的な営業活動は安全であると同時に、利益拡大の可能性も閉ざされてしまいます。
債権保全を実施することで、不測の事態に備え、積極的に営業活動を行うことができます。
中小企業倒産防止共済とは?
中小企業倒産防止共済とは、中小企業の取引先が突然倒産した際に、連鎖倒産などの危機から救済することを目的とした制度です。
中小企業基盤整備機構が運営する共済制度で、「経営セーフティ共済」、「倒産防」とも呼ばれています。
昭和53年4月にスタートして以降、多くの中小企業に利用されています。
中小企業倒産防止共済の加入企業は、取引先企業の倒産によって代金が回収できなくなった事態に備え、積み立てを行います。
取引先企業が倒産して売掛金などの回収が困難になった際には、それまで積み立ててきた金額の最大10倍を借入れでき、体制の立て直しに役立てることができます。
無担保・無保証で利用可能であり、借入れの上限は8,000万円です。
中小企業倒産防止共済はあくまで借入れの制度であり、不良債権が補填されるというわけではありません。
しかし、「倒産後にスピーディーに借入れできる」、「掛金を経費計上できる」、「解約した場合は条件によっては解約手当金が戻ってくる」といったメリットから、債権保全策と同じようにリスク軽減策として広く利用されています。
中小企業に適した債権保全策
債権保全は、担保権の設定や保証契約の締結、遅延金利の設定、手形決済化など、対応方法はさまざまです。
実際に取引先企業が倒産した場合には、担保権行使や保証履行といった施策も検討すべきでしょう。
また、リスクを最小限におさえるだけでなく、リスクを移転する方法も有効です。
ここで、中小企業がリスクを移転する方法として有効な債権保全策をいくつかご紹介します。
中小企業の債権保全策①:取引信用保険
取引信用保険は、取引先企業の倒産などで回収できなくなった売上債権(売掛金・受取手形等)を保険会社が補償する損害保険商品です。
保険会社によって損害補填率が算出され、保険金が支払われます。
また、取引信用保険の利用により、保険会社の審査に基づいた各取引先企業の信用状況の情報を、与信限度額(与信枠)を決める参考情報として利用することも可能です。
中小企業の債権保全策②:保証ファクタリング
保証ファクタリングは、企業が販売先に対して保有している商取引上の売上債権(受取手形・売掛金)の支払を、保証会社が保証するサービスです。
サービスを利用する企業は、保証料を掛け捨てで支払います。
取引先企業に対してはファクタリング会社による審査が行われますが、倒産リスクの高い取引先企業に対しては保証枠を受けられないケースもあります。
取引信用保険と保証ファクタリングを紹介しましたがこれまで記載した以外にも、1社単位から契約が可能な債権保証サービスなどがあります。
少額の取引先が複数ある場合、海外の取引先が多い場合など、企業によって取引環境はさまざまです。
自社の業態や取引先企業の状況を考慮した上で、自社に合った債権保全策を選択しましょう。
おわりに
取引先企業が倒産すると、商品の対価としての代金を回収できないだけでなく、自社も資金繰りが滞り、最悪の場合倒産に至る可能性があります。
そういった事態を避けるためには、中小企業倒産防止共済への加入や、何らかの債権保全策を講じることが求められます。
様々な保険会社や保証会社が債権保全サービスを提供しているため、自社に合ったサービスを選ぶようにしましょう。
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